箒屋

 仕事が終わりかけた夕刻、階下から「箒屋さんが見えましたけど」との声。降りて行くと目つきのスルドイ初老の男性が立っている。以前伺ったことがあると言われるが記憶に無い、よく聞けば箒は毎年売れる物では無いので2、3年に一度づつ廻っているとのこと、ここ2、3回は来ても留守だった、その前は先代が独り居て、自分はもう隠居の身で工房や備品のことは息子に任せていてその息子は留守だ、と言ったらしい。片手用の座敷箒の束を持ったおじさんをとりあえず招き入れる。
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 僕は箒が好きで、仕事に使う箒にはそれなりの拘泥がある。工事現場でも床の養生を取り払った後や畳を敷いてしまった後はナイロン毛の箒を使うのに抵抗があり、使い古しの座敷箒を使っている。自宅は旧い和室2間続きがあり、縁側が廻っているので掃き出したい放題で、ヨメは長柄の座敷箒を重用している。電気掃除機より埃が舞わないというのが彼女の説でもあり上掛けの絨毯なども箒で掃いてしまう。下職さんの中でも竣工近くなって現場に入る職人さん(建具屋、畳屋、経師屋など)は座敷箒を携えて現場にやってくる人が多い。
 この箒屋さんの箒は掃いてみるととても具合が良いので幾本かを譲ってもらうことにする。
 
 縢っていないのはその場で編んでくれるらしく、椅子に座って編み始めるおじさん。
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 リズムよく慣れた手つきで編むのは見ていて気持ちがいい。
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 完成品、毛が長く、しなり具合とまとまりかたが良い。
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 おじさんは2代目だが、息子さんは箒屋を継いでいないのだそうだ。自身で箒木(ほうきぎ=ほうき草)を栽培し、値段によって多種の箒を作りやってこられたが、その技術や知恵が次代に伝わることは無い。 和室の需要が減り、電気掃除機が普及し、ハタキを使ったり雑巾を絞ったり出来ない人が増えている昨今、当たり前の事かも知れないが何となく寂しいことではある。
 いい道具だと思うけどなぁ。
by t-h-arch | 2009-10-27 22:30 | 道具
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